中国でApple Payを使う
中国でもApple Payが始まっている。中国におけるApple Payはどうなっているのだろう?
元々はiPhone 6から始まったApple Payだが、日本における非接触型決済は長年FeliCa仕様が主流のため、Apple Payが出た当時は使えなかった。
iPhoneにFeliCaが搭載されていなかったためだ。iPhone 6/6sに搭載されていたNFCのシステムはNFC-AとNFC-B(Type A/B)であった。
中国でも地下鉄などのカードではFeliCaが使われていることが多いようだが、地域ごとにバラバラで統一性がない(例えば上海の地下鉄カードを広州で利用することはできない)。この点は日本の方が全国統一が進められており、利用者には便利だ(例えばSuicaは北海道でも利用できる)。
中国では日本より早く、2016年2月頃よりApple Pay使えるようになったが、使えるところはかなり限られていたようだ。
iPhone 7から日本でも使えるようになったApple Payに登録できるのはクレジットカード(システムは旧来のQUICPayとiDを使う)とSuicaだが、中国では日本でもお馴染みの銀聯カードだ。
銀聯カードは大きく分けて2種類ある。1つは銀行のキャッシュカード=デビットカード、もう1つはクレジットカード。
デビットカードは口座にお金がないと支払えないが、クレジットカードだと借りられるので支払える。
ところで、つい先日から広州の地下鉄でもApple Payが使えるようになったそうだ。
Apple Payを導入するため、広州の地下鉄はゲートを新しくしたとのこと。今まではFeliCaだったが、NFC-A/Bにも対応するゲートにしたのかも知れない。
そう、中国ではNFC-A/B仕様のカードリーダーを利用する。なぜなら、銀聯にも実は非接触型決済が備わっているカードがあり閃付(Quick Pass)と言う。
それにはNFC-A/Bが使われており、Apple Payはそのシステムを利用するのだ。
そのため、中国ではiPhone 6/6sでもApple Payを利用できる。
ちなみに、雲閃付という呼び方もあり、イマイチ統一性がない.. 恐らく、銀聯カードの場合は閃付、同じシステムを使うスマホなどを使う仕組みを総称して雲閃付としているのではないか?
ところが、デビットカード版銀聯カードでのApple Payは広州の地下鉄でどうやら使えないらしい。クレジットカード版銀聯カードでのApple Payが必要みたい。
実は中国でApple Payを使った人の報告を読むと、支払い時にカードリーダーへの暗証番号入力が必要のようだ。
確かにApple Payを登録する時は、カード番号の入力と電話番号認証だけ。セキュリティ的にヤバい。他人のカードも割に簡単に登録できてしまう可能性がある。実際アメリカではそういう問題が起きて、電話をかけて認証する仕組みになったらしい。
そういうこともあって、デビットカード版では支払いに暗証番号入力が必要なのだろう。
もちろん地下鉄の出入ゲートでいちいちそんなことはできないので、クレジットカード版しか使えないのだろうと思う。
自分が試したところ、Apple Payにカードを登録する際にも、認証方法が微妙に違い、デビットカード版だと銀行に登録してある携帯電話にワンタイムパスワードがショートメールが送られて来てそれを入力するが、クレジットカード版だとカード裏面のセキュリティカードを入力する必要があった。
外国人が中国でクレジットカードを発行するのは極めて難しいので、日本人が中国でApple Payを使う場合、通常はデビットカード版での登録になるだろう。
試してみたが、日本で発行できる銀聯カードはApple Payに登録できない。
中国でも今後、クレジットカード会社による非接触型決済が普及すればいいのだが(そうなれば近い将来日本でも普及するであろうVisa payWave、Mastercardコンタクトレス、J/Speedy、ExpressPayなどのNFC PayやEMV Contactlessと呼ばれる非接触型クレジットカード決済がそのまま使えるようになる)、銀聯以外のクレジットカード決済の普及率を見ると難しいだろう..
ちなみに香港では、八達通(Octopus)や銀聯の閃付ではなく、国際的なNFC Pay(EMV)がApple Payをサポートするようだ。
つまり、日本側のクレジットカードにおけるNFC Payへの対応が進めば、香港でなら日本のクレジットカードそのままのApple Payが使えるようになるだろう。
さて、中国では近年地下鉄の建設が相次いでいる。地方の2、3番目の都市でも地下鉄をどんどん建設している。90年代後半まで、北京と上海くらいにしか地下鉄はなかった。しかもそれぞれ2路線程度だった。
日本と違い、中国には近距離移動のための鉄道がほとんどなく(鉄道は長距離移動の手段がメイン)、地下鉄は正に激動の中国を象徴する存在だ。福岡の地下鉄建設も見習ってほしいものである(天神南から博多までわずか1.4kmで10年/450億円もかかる)。
しかし、人の流動が多い割に、前述のように利便性が悪い。
閃付やApple Payがどこの地下鉄でも使えるようになれば、一種の統一と呼べるようになるだろう。
追記(2018/01/27):
香港と中国(広東)に行った際に、色々なところでApple Payを試したので報告する。
使った端末は、日本のキャリアで買ったiPhone 8(SIMフリー化済み)である。iPhone 7であればちゃんとiOS 11にしておこう。
まず香港だが、香港はかなり前からFeliCaを使ったオクトパスカードが普及していて、列車はもちろん、様々なところで利用ができたのは前述の通り。
残念ながらApple Payが使うのは普及しまくっているオクトパスカードのシステムではなく、NFCの方だ。
だが、こちらも徐々に普及して来ているようで、香港の空港にあったセブンイレブンでも問題なく使えた。
ちなみにApple Payに登録し、試したカードはQUICPayとMastercardコンタクトレスの両方をサポートするオリコカードである。
次に中国でも試した。思ったより対応している店が多かった印象である。恐らく閃付のロゴがある端末があるところならどこでもいけるのではないか。
また、色々な店で使ってみたが、事前に調べていた暗証番号の入力はどこも不要だった。マクドナルドのキヨスク端末でもカウンターでも、ワトソンズでも、またスーパーでも不要であった。これは土地柄なのか改善されたのかは不明。
銀聯カードを登録する際、リージョンを中国にする必要がある、と言う人もいるようだが、自分の場合は不要であった。
ただ感じたのは処理速度の遅さ。
やはり日本のSuicaほど決済の速さは、香港・中国の両方ともなかった。
決済完了まで体感的に若干もたつく。
銀行のATMでもApple Payが使えるとは聞いていたが、実際にそうだったので合わせて報告する。
私は残高照会や引き出しにApple Payで成功した。ちなみに、カード発行の銀行ATMで試したのみで、他行のATMでも使えるのかは分からない。
ただし、ATMの利用には暗証番号の入力が流石に必要であった。だとしてもカードを持ち歩く必要がなくなるというメリットはある。
さて、普及で言えば、圧倒的に微信(WeChat)による支払いなのだが、Apple Payも徐々に普及していると感じた。
もちろん専用の決済端末が必要になるため、QRコードのみの導入の手軽さはないので、ほぼ大手小売店に限られてくるとは思うが、今後の更なる普及に期待したい。
本当に現金を持たない出張が実現できた今回の香港・中国行だった。
追記(2018/06/03):
iOS 11.3からApple Payに北京と上海の交通カードを追加できるようになっています。
追加するにはiOSをアップデートして、iPhoneの設定で地域を一旦中国にします。
また、初回追加時にデポジットの支払いが必要で、その支払いをApple Payの銀聯カードで行うため、Apple Payに銀聯カードを先に登録している必要があります。
私が試した時にはデポジットの20元と、最低チャージ金額の5元ではなぜかうまくいかず、チャージを10元にしたら決済が通りました。
なお、現在iOSの最新版は11.4で、iOS 11.4から深圳や武漢、重慶、江蘇省などの交通カードも新たに追加されると噂されていましたが、結局それらは追加できないままです。
次期iOS 12ではNFCがサードパーティにも開放されると言われています。
今後使える交通カードがiPhoneでもどんどん増えるのではないかと思われます。JR私鉄各社も対応していってほしいところです。
それと香港ではどうなるのだろう。FeliCaである八達通(Octopus)が対応すれば便利になるが、上述の通りすでに香港ではNFC PayがApple Payとして使われている。競合しないようにするのか、日本のように色々対応させていくのか。同じくiPhoneが普及する地域だけに、よく行く者としてはオクトパスカードの対応に期待したいところである。
追記(2018/11/24):
iOS 12.1が出ています。
地域リージョンを中国にして試しましたが、まだ北京と上海以外の交通カードは出てきません。
中国現地の報告も特にないので中国の他の交通カードはまだ未対応のようです。
追記(2018/12/01):
香港と広東に出張しましたので使い勝手などを報告します。
香港着。九龍駅から新しい西九龍駅まで歩く。普通に歩ける。九龍駅より東にあるけどな!
あベンディングでもMasterCardコンタクトレスが使えると思ったら、身分証がないとダメ。
並ばないといかん。ただ、並んだとこでも使える!未だに表記はPayPassだが。
今日は深圳北まで行き、そこからは地下鉄だ。 pic.twitter.com/Uyx3vxc5XM— 名言君 (@mugongshan) 2018年11月25日
ApplePayで地下鉄。広州に行った際試したら.. ダメでした。スタッフに聞くと、やはりクレカ版じゃないとダメと教えてくれました。
いいニュースとしては、他の地方でも使われてる交通カードが広州でも使えるようです。
これは前からApple Payが対応すると噂されてる奴ですね。なかなか進まないけど。 pic.twitter.com/c2tcDsF9cB— 名言君 (@mugongshan) 2018年11月26日
中国でスマホ決済しながら思うのは、この実名と結びつけられた情報が全て国に行くということ。
何食べた、どこで寝た、どこに行った、何買った、全て筒抜け。根本の考え方が違う怪しげな国に。※車に乗ると全ての会話がスマホに録音され、サーバに送られている。知ってます?中国では今そうなんです pic.twitter.com/R7N7QxgPNb
— 名言君 (@mugongshan) 2018年11月26日
ネットで中国のApple Payは暗証番号がいるとよく書いてるけど、自分の場合必要だったことはない。ATMは流石にいるけど。
で今回試したらやっぱり不要で、1000元以下は免密免签とあった。つまり暗証番号もサインもいらない。
QRは売り手にはいいけど、買い手としてはタッチ決済の方が有難い。 pic.twitter.com/upoFAN1yJH— 名言君 (@mugongshan) 2018年11月27日
中国だとQR決済が何かと話題ですが、深圳のタクシーでもApple Payが使えるようになってました。ようは銀聯の閃付です。しかも割引キャンペーンやってました。
運転手もカードしか使えないと思ってたみたい。時代は進んでんだよ!
しかしやはりQRよりタッチの方が便利。https://t.co/tLxsrSAAMe pic.twitter.com/yh7BSyHVOu— 名言君 (@mugongshan) 2018年11月28日
追記(2019/07/05):
深センの地下鉄で普通の銀行カードのApple Payが使えるようになってて便利になった.. pic.twitter.com/wQnekblXjL
— 名言君 (@mugongshan) 2019年7月3日
しかもこれ、広州のと違って、クレカ版の銀聯カードじゃなくて、銀行キャッシュカード版でいける!さすが深圳。 pic.twitter.com/ZjzOqqdO8U
— 名言君 (@mugongshan) 2019年7月5日
最近のコメント